Abstract : |
胸腺腫47例を組織学的に皮質型28例, 髄質型13例, 混合型6例に分類し, 各組織亜型において臨床的特徴, 上皮細胞の核面積より見た核異型, 免疫組織学的所見を比較検討した. 対象として胸腺組織37例を用いた. 浸潤型胸腺腫は皮質型では28例中16例(57.1%), 髄質型では13例中1例もなく(0%), 混合型では6例中1例(16.6%)に認められ, 皮質型は髄質型に比べて浸潤型胸腺腫が有意に多かった(p<0.01). Myasthenia gravis(MG)の合併は皮質型では28例中15例(53.6%), 髄質型では13例中2例(15.3%), 混合型では6例中2例(33.3%)に認められ, 皮質型は髄質型に比べてMG合併率が有意に多かった(p<0.05). 胸腺腫の上皮細胞の核面積の平均値では皮質型は髄質型より核面積が有意に大きかった(p<0.001). 免疫染色で胸腺組織では皮質の最外側の上皮細胞はLeu7とkeratinに陽性であり, 皮質内側と髄質の上皮細胞はLeu7に陰性でkeratinに陽性であった. 胸腺腫は全例Leu7とkeratinに陽性であったが, それらの染色性は様々であり, 皮質型と髄質型において胸腺組織の皮質と髄質のような一定した傾向はなかった. 以上より皮質型と髄質型による胸腺腫の組織亜型分類は腫瘍の浸潤性及び上皮細胞の核面積より見た悪性度に重要な関係をもつことが示された. 一方, 胸腺腫と胸腺組織の上皮細胞の間には組織学的及び免疫組織学的所見の相違が見られ, 胸腺腫の発生と分化の複雑性を表わしているものと思われた. |