Abstract : |
左心バイパス(LHB)施行時に右不全が生じる事が指摘されているが, その原因に関しLHBそのものによるとする説と以前より存在する右心不全が現れるとする説がある. よってLHBの右心機能への影響と心室中隔の関与を知るため, LHBより変化する右心機能の指標が, 右心機能障害を起こすとされる冠状動脈中隔枝結紮モデルにおいて, どの様に変化するかを16頭の雑種成犬を用いて実験的に検討した. 体外循環心停止下に冠状動脈中隔枝を剥離し結紮用の糸をかけ, 体外循環離脱後, 上下大静脈遮断下に頸静脈, 大腿静脈より脱血し, ポンプにて右房送血し右心前容量負荷を100ml/kg/minとした. これに遠心ポンプによる左房脱血大腿動脈送血の定常流LHBを行いバイパス流量を右心拍出量の0%~100%と変化させた際の右心機能(右房圧, 右室圧, Max RV dp/dt, 右室自由壁収縮幅)を測定した. 次に中隔枝結紮前後, 更に結紮後にLHBを施行した場合に同様に測定を行った. RV dp/dtは左心バイパス率(LHBR)の増加に伴い低下し, その減少と共に上昇した. 中隔枝を結紮しLHBを行うと結紮前と同様な有意な変化を示した. 超音波振動子にて測定した右室自由壁収縮幅は, LHBRの増加に伴い減少し, その低下と共に増加した. 中隔枝を結紮すると収縮幅は減少し, これにLHBを行うと結紮前と同様の変化傾向を認めた. 以上より, 1.LHBRを増す程, RV dp/dt, 右室壁収縮幅は低下する. 2.中隔枝結紮により右室壁収縮幅は減少する. 3.中隔枝結紮モデルにLHBを行うと更にRV dp/dt, 右室壁収縮幅は低下する. すなわちLHBRが増す程右心機能は低下し, 心室中隔虚血による右心機能障害の存在する時LHBを行うと更に右心機能低下を起こすと考えられた. |