Abstract : |
1977年6月より1988年6月までに当科で切除された肺癌症例のうち26例に胸膜播種を認めた. 性別は男16例, 女10例であった. 年齢は34歳~78歳まで, 平均56.7歳であった. 組織型は腺癌が23例, 大細胞癌が1例, 腺・扁平上皮癌が1例, 小細胞癌と腺癌の混合型が1例であった. 腺癌の中でも高分化型が15例と多く, 中分化型が7例, 低分化型が1例であった. 腫瘍の大きさに関係なく胸膜播種が認められた. 胸水貯留例は8例で, 5例が血性, 3例が漿液性でいずれも細胞診で悪性細胞を認めた. 胸膜播種を術前に診断することは胸水貯留例を除いて困難であった. 手術術式は全胸膜肺切除が10例, 胸膜肺葉切除が6例, 肺葉切除が10例であった. 予後は1年生存率が56.3%, 2年生存率が23.2%, 3年生存率が15.4%, 4年生存率が7.7%で, 5年生存例はなかった. 中間生存月数は, 16.0カ月であった. 胸水貯留例の予後は, その他の症例の予後よりも悪く, 8例中6例が1年以内に死亡した. 術後の合併療法として行われた化学療法の明らかな効果は認められなかった. しかし術前に温熱療法を行った胸水型の1例では, 切除標本で病理組織学的にEf2の治療効果が認められた. 胸膜播種症例の手術適応は, 現在のところ悪性胸水貯留症例にはないと考える. 開胸時初めて胸膜播種を認めた例では, できる限り根治に近い切除を行い合併療法として, 温熱療法及びより有効な化学療法を行うことが必要と考える. |