Abstract : |
Ca拮抗薬であるdiltiazem(D)が開心術時の心筋障害に及ぼす効果について, 心筋細胞内電解質環境の解析を中心に検討した. GIK液を用いた成人開心術30症例を対象とし, D非投与コントロール(C)群, D添加(7.5mg/L) cardioplegia液使用(DC)群, Dを術前術後にかけて1.5μg/kg/minで持続点滴投与した(DP)群の3群に分類した. 心筋細胞内電解質([Ca, K, Na, Cl]in)の定量にはX線マイクロアナライザー法を用いた. C群では[Ca]inは再灌流時に著しく増加し, [K]inは虚血中と再灌流時に減少した. 一方DC, DP群では[Ca]inは再灌流時に増加を認めなかった. また[K]inも虚血中には低下したが再灌流時には術前値に回復する傾向にあった. 3群とも[Na]in, [Cl]inは虚血中に増加するが, DC, DP群では再灌流時に減少傾向にあった. 術後の血行動態(心係数, 左室仕事量)においてDC, DP群がC群より優れており, これらはDの後負荷軽減作用に起因すると推察された. 再灌流時に細胞内電解質環境が良好であった症例は, DC群よりもDP群に多く認められ, それらの症例は術後急性期の心係数も良好に保たれていた. CPK-MB値もDC, DP群では有意に低かった. 以上から, diltiazemは再灌流時にCaの細胞内蓄積を抑制し, Na-Kポンプの恒常性を保つなど細胞内電解質環境の不均衡を防止する方向に働くことが明らかとなり, 開心術時の心筋保護に有効であると結論された. |