Authors : |
水谷哲夫, 片山芳彦, 小野田幸治, 高尾仁二, 田辺一, 金森由朗, 鹿野和久, 矢田公, 湯浅浩, 草川實 |
Abstract : |
従来, 臨床的に心筋血流量を非侵襲的に測定することは極めて困難であった. しかしHe-Neレーザードップラー血流計が開発され, 特殊な心筋用の小型・軽量プローブの開発, プレスネットによるプローブの固定, レーザー導光用ファイバーの弾性化, などによりその臨床応用を可能とすることができた. 30例のA-Cバイパス症例に対し術中に右室前壁及び左室前壁の心筋血流量を測定し, 左前下行枝バイパス術の効果を判定した. バイパス術に関与しない右室前壁の血流量はバイパス前77±15ml/min/100gr, バイパス後81±12ml/min/100grで有意な変化を示さなかった. しかし左室前壁の血流量は, SVG群で術前58±11ml/min/100grより術後86±9ml/min/100grへ(p<0.001), IMAG群でも術前73±14ml/min/100grより術後83±15ml/min/100grへ(p<0.01), いずれも有意に増加した. これを血流変化率としてみると, 右室前壁では5±18%の変化を示したにすぎなかったが, 左室前壁ではSVG群で52±32%, IMAG群でも18±12%の増加を示し, いずれの群でも右室前壁と比べ有意に増加した. なお, 術後の左室前壁の血流量にはSVG群とIMAG群との間に有意差はみられず, またその値は諸家の報告する正常値とほぼ同じ値であった. 以上より, 左前下行枝への血行再建により左室前壁の血流は増大することが確認でき, レーザー血流計による心筋血流の測定は, 術中におけるバイパス術の効果判定に有用であった. |