Abstract : |
一期的胸部食道癌切除再建症例27例を対象に, 術前日から第4病日までの呼吸循環動態の変動と共に, 血管外肺内水分量, 水分出納, 血漿膠質浸透圧の推移を経時的に観察し, 術後肺合併症の成因について, 主として肺浮腫の病態と臓器相関の観点から検討した. また, 頸部上縦隔リンパ節拡大郭清群, 70歳以上の高齢者群についても術後変動の特微について考察した. 肺合併症群では, 血漿膠質浸透圧-肺動脈楔入圧(COP-PAW)較差の変動と血管外肺内水分量(EVLW)及び術後の腎機能との間に各々有意の強い相関が認められた. 肺合併症群における術後腎機能の低下は主として術直後からの左室機能低下によるものであり, これらがStarlingの法則に基づく水力学的因子として, 肺間質浮腫の消長に影響を及ぼしていることがうかがわれた. 頸部上縦隔リンパ節拡大郭清群においては広範囲のリンパ節郭清に起因する血漿膠質浸透圧の減少がCOP-PAW較差の低下をもたらし, 一時的な左室機能の低下と肺浮腫を増加させると共に, 肺内シャントの増大に関与するものと考えられた. 高齢者群では年齢的因子による術直後からの心腎機能の低下と, 心機能の維持を目的とした多量の水分投与が水分貯留傾向を招き, EVLWの増加が肺内シャント増大と直接的に相関していた. 従って, これらの特徴的体液変動を考慮した術後早期からの緻密な管理が必要と思われた. |