Abstract : |
左膿胸胸郭成形術の1年6ヵ月後に, 膿胸手術時に膿中に証明された菌の1つであったアスペルギルスによって胸骨骨髄炎を来たした症例を経験した. 病巣の完全切除と腹直筋充填術を施行し, 良好な結果を得た. 胸骨骨髄炎の発症機序は, 胸郭成形術の際に遺残した肋軟骨にアスペルギルスが感染し, ここから直接, 胸骨へ伝わったものと考えられた. アスペルギルス性胸骨骨髄炎は, 胸骨正中切開後に発生した2症例が報告されているだけであり, 極めてまれな経験と思われたので報告した. 真菌性の胸骨骨髄炎は, 免疫不全患者, 不法薬物常用者に於ける血行性感染例や, 胸骨正中切開による心臓手術後の合併症としての発生例などの報告が散見されるが, 一般的にはまれなものである. 真菌の種類では, ほとんどがカンジダによるものであり, アスペルギルス性胸骨骨髄炎は, 胸骨正中切開後に発生した2症例についての報告がみられれるだけであり, 極めてまれなものといえる. われわれは, 最近, 膿胸に対して胸郭成形術を行なった患者の遠隔期に, 膿中に菌の1つとして存在したアスペルギルスによって胸骨骨髄炎を来たした症例を経験したので, 文献上の考察を加えて報告する. |