Abstract : |
完全血行再建の証明された, 陳旧性心筋梗塞例10例(MI(+)群)及び非梗塞例6例(MI(-)群)を対象に, 心RI angiographyを用い, 術前後の安静時及び運動負荷時における左室機能を評価し, 更に梗塞範囲の面からも検討した. なお, 狭心症の疑いで心臓カテーテル検査を行い, 心疾患の否定された6例を対照群とした. 術前において, MI(+)群, MI(-)群の両群とも, 運動負荷(Ex)に際して駆出率(EF)は有意に低下し, 収縮期血圧/収縮期末容積係数(SP/ESVI)に差を認めなかったが, 拡張期末容積係数(EDVI)は有意に増加した. 術後, MI(+)群においては, Exに際して1回拍出係数(SI), EF及びEDVIは維持され, SP/ESVIは増加した(安静時4.1±1.6→Ex時6.1±3.0, p<0.01). Ex時のEF及びSP/ESVIは, MI(-)群並びに対照群の同指標に比し有意に低値であった. 術後, MI(-)群においては, Exに際してSI, EF及びEDVIは維持され, SP/ESVIは増加(安静時5.1±1.4→Ex時11.4±3.3, p<0.01)した. Ex時のEF及びSP/ESVIは対照群と有意差を認めなかった. 梗塞領域の左室心筋に占める割合(MI size)と術後におけるExによるEFの増加度及びSP/ESVIの増加率は負の直線相関関係にあった. 以上より, 完全血行再建例では梗塞例においてはEF及びSP/ESVIが改善し, 更に非梗塞例においてはこれらが正常化すると考えられた. 更に, 広範囲梗塞症例では, 完全冠血行再建症例においても, 運動負荷に対する左室の駆出予備能及び収縮予備能の低下が残存する可能性が示唆された. |