Abstract : |
体外循環を用いた心臓手術後に白血球より放出されるpolymorphonuclear leukocyte elastase(PMNE)が上昇し, PMNEによる組織破壊が呼吸機能障害の発現に関与している可能性がある. 成人の冠動脈バイパス手術20症例を対象とし内10例に多価酵素阻害剤であるウリナスタチン(Miraclid(R))を体外循環前と終了後に5, 000単位/kg投与した. 術前, 体外循環後1時間, 術後3時間, 第1, 4病日に採血して, ウリナスタチン投与群(U群)と非投与の対照群(C群)を比較し, PMNEと呼吸機能に対するウリナスタチンの効果を検討した. 末梢白血球数は体外循環後1時間と術後3時間でU群が有意に低かった(p<0.01). PMNEは, 体外循環後1時間で最高値を示し以後漸減した. 最高値はC群の1,981±562μg/lに比べ, U群は1,165±560μg/lと有意に低く(p<0.02), 術後早期には末梢白血球数とPMNEに正の相関を認めた(p<0.01). 術前値に対する術後の血清総補体価の減少量と, β-glucuronidaseの増加率はU群で低値を示した(p<0.05). oxygenation index(PaO2/FIO2)を呼吸機能の指標として評価すると, C群で術後のPaO2/FIO2の回復が遅れた(p<0.01). 以上の結果から, ウリナスタチンは体外循環時の肺組織障害を来す生体反応を抑制し, 術後の呼吸機能の回復を促進することが示唆された. |