Abstract : |
患者は42歳, 男性. ベルトコンベアーに右前腕を巻き込まれ, 肩甲帯で右上肢を離断された. 受傷30分後に当院に搬送された. 胸部には第3肋間に開放性損傷を認めた. 開放性損傷部位より胸腔内を観察すると上葉の肺破裂が認められた. 手術は気管内挿管後全身麻酔下に第3肋間の開放創を拡大して行った. 上葉はS1, S2区域間面で裂けており, 裂創は肺門部の亜区域気管支まで及んでいた. 上葉切除し, 更に肋骨骨折部位をキルシュナー鋼線で固定後, 胸壁欠損部を授動した周囲の筋肉で補填し胸壁を再建した. 術後経過は良好で, 創部も感染することなく治癒し, 受傷41日目に肋骨固定に用いたキルシュナー鋼線を抜去し, 52日目にリハビリテーション施設に転院した. 鈍的外力による胸部開放性損傷はまれな外傷である. われわれは手術により救命し得た鈍的胸部開放性損傷による肺破裂症例を経験したので報告する. 「症例」患者:42歳, 男性, 土木作業員 主訴:右上肢離断, 右胸部痛, 呼吸困難 現病歴:昭和62年6月17日, 土木作業中にベルトコンベアーに右前腕を巻き込まれ, 肩甲帯で上肢を離断され, 受傷30分後に救急車で当院に搬送された. |