アブストラクト(38巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 成人開心術症例における脳循環の臨床的検討-脳分離体外循環法への応用-
Subtitle : 原著
Authors : 河野道夫, 鷲尾正彦
Authors(kana) :
Organization : 山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 6
Page : 970-981
Year/Month : 1990 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 脳分離体外循環法における適正脳灌流量及び圧を求める目的で, 中等度低体温下に施行した成人開心術症例34例に電磁流量計を用い腕頭動脈(以下BC), 左総頸動脈(以下LCC)血流量を測定し, 圧と流量及び脳組織代謝の面から検討を加えた. BC及びLCC流量の和を脳分離体外循環法の際の脳灌流量とすると体外循環(以下CPB)中人工心肺よりの送血量が2.4L/min/m2の場合の脳灌流量は約600ml/minであった. 脳動静脈酸素含量較差にLCC流量の2倍量を乗じた値を脳酸素消費量推定値とし, CPB前の値を100%とすると, CPB中は50.1±10%まで低下したがCPB終了直後には101.7±20%まで回復していた. 総頸動脈圧はCPBの前後を通じ橈骨動脈圧と同様の推移を示し, 常に平均動脈圧で約10mmHg低い値を示した. CPB中送血量が2.4L/min/m2と一定であれば, 総頸動脈圧が40~80mmHgの範囲でLCC流量が一定であることよりcerebral autoregurationは効いていると考えられた. 14例において送血量を減少させた際の脳酸素消費量推定値は, 2.4L/min/m2送血時を100%とすると1.8L/min/m2で103±11.1%, 1.6L/min/m2で98.1±10.5%とほぼ変化がなかったが1.2L/min/m2では66±12.5%と著明に低下し, 1.6L/min/m2送血時の脳灌流量は約400ml/minであった. 以上より中等度低体温において, 脳分離体外循環法の際の脳灌流量の目安としては2.4L/min/m2送血時の600ml/minが適当と考えられたが, 1.6L/min/m2送血時に約400ml/minまで低下しても脳組織代謝は保たれる可能性が示唆された. 灌流圧は, 総頸動脈圧で40~80mmHg, 橈骨動脈圧で50~90mmHgが適正と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脳分離体外循環法, 脳灌流量, 脳灌流圧, 脳酸素消費量
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