Abstract : |
重症呼吸不全における高炭酸ガス血症の治療を目的として, 著者は, 教室で開発した外部灌流式中空糸型膜型肺の肺内圧力損失の少ない点に注目し, 回路内にポンプを必要としないA-V mode pumpless ECMO(大腿動脈脱血, 大腿静脈送血)を, 肺胞低換気型呼吸不全に対し比較的長時間(24時間)にわたり施行した. 実験に使用した試作肺は, 小型で充填量も約60mlと少なく又その肺内圧力損失は, 最大流量21/minで約110mmHgである. 肺胞低換気群(T. V. =10ml/kg, R. R. =5/min, n=5, G-1)とpumpless ECMO群(T. V. =10ml/kg, R. R. =5/min, n=9, G-2)の2群に分けて比較検討し, 以下の結果を得た. 1. G-1は著明な高炭酸ガス血症, 低酸素血症に陥り4時間以内に全例死亡した. G-2は高炭酸ガス血症及び低酸素血症が改善され9例中4例が24時間生存し得た. 2. 炭酸ガス除去能は24時間後においても202.7±18.0ml/min/m2と良好であった. 3. 血液学的検査ではHb値の経時的低下を認めたが, 血小板数の有意な低下を認めなかった. 4. G-1及びG-2の大腿部骨格筋細胞の透過型電子顕微鏡検査で, ミトコンドリア由来の空胞性変化を認めた. 以上の結果より, 試作肺は操作性に優れ, ガス交換能も安定しており, その性能も24時間の使用に十分耐えうるものと思われ, 高炭酸ガス血症の一治療法として比較的長時間使用可能な人工肺と思われる. また透過型電子顕微鏡所見より, ECMOの成績向上のために, 呼吸不全時及びECMO時における細胞内呼吸代謝障害についてさらなる検討が必要と思われた. |