Authors : |
青木満, 今井康晴, 黒沢博身, 藤原直, 福地晋治, 石原和明, 澤渡和男, 河田政明, 松尾浩三 |
Abstract : |
過去10年間に心内修復術の対象となった心室中隔欠損(VSD)及び肺動脈狭窄(PS)を伴った完全大血管転位症(d-TGA III型)32例中12例(37.5%)に, Rastelli手術の適応外とされる漏斗部中隔への三尖弁腱索挿入を認めた. このうち, 初期の5例に対してPS解除(弁切開/筋線維輪切除)+VSD閉鎖+心房内血流転換術を施行した(死亡0)が, PSの解除が不十分で肺循環心室/体循環心室収縮期圧比(Ppv/sv)が0.75±0.22と高く, 動脈側房室弁逆流(2例), 上室性不整脈(1例)も相まって, 術後44~113ヵ月, 平均73.6ヵ月の臨床状態はNYHA 1度が2例, 2度2例, 4度1例と満足できるものではなかった. 一方, 最近の6例には三尖弁腱索を漏斗部中隔と共に心内導管右室側に転移することによって, Rastelli手術あるいはREVを行った(死亡1). 術後, 左室-大動脈間に圧較差を認めた症例はなく, PSの解除も十分であった(Ppv/sv=0.49±0.08). 漏斗部中隔の転移に伴い2例に三尖弁逆流(TR)を認めたが, PSが十分に解除された右室(静脈側)の房室弁となるため影響は少なかった. 動脈側房室弁逆流は認めなかった. 術後2~27ヵ月, 平均13.4ヵ月の臨床状態は, 術後脳障害を起こした1例を除くと, TRを伴った症例を含め例がNYHA 1度であり, また全例洞調律であった. 本法を用いることによって, 三尖弁腱索異常挿入を合併したd-TGA III型に対しても解剖学的根治術であるRastelli手術・REVを行うことが可能であり, 心房内血流転換術よりも良好な術後状態・遠隔成績が期待できる. |