Abstract : |
症例は69歳の男性, 胸部X線写真及び気管支鏡検査にて, 右中間幹を閉塞する腫瘍を指摘され, 細胞診にて扁平上皮癌と診断された. 胸部CTでは, 無気肺のため縦隔浸潤の有無は不明確であったが, 術中所見で広範な左房及び右房への浸潤を認めた. 手術は体外循環下に右肺摘除と左房, 右房及び心房中隔の合併切除を行い, 左房及び右房の欠損部はウマ心膜にてパッチ補填を行った. 組織型は中分化扁平上皮癌で左房心筋内及び右房心外膜まで浸潤していた. 術後病期はpT4N2M0, stage IIIBで相対的治癒切除であった. 術後の循環動態は安定して経過し, 心エコー検査では十分な左房容量が保たれていた. 患者は術後5ヵ月に誤嚥性と思われる肺炎にて死亡したが, 再発を思わせる所見は認められなかった. 左房浸潤が高度な症例では体外循環下の切除が安全で確実であり, 欠損部が大きくなった場合は, パッチ補填が左房容量を保つ意味で有用と思われる. 近年, 心大血管へ浸潤した進行肺癌に対しても積極的な外科治療が行われており, その切除に際して体外循環を使用したとの報告も散見される1)~4). |