Abstract : |
フリーのsuperoxide dismutase(SOD)は, 組織固着性に乏しく且つ, 細胞内透過性のないことから, その投与法は重要であると考え, 投与法の差異による効果を検討した. 雑種成犬21頭を用い, 人工心肺下完全体外循環とし, 大動脈遮断による30分間の常温虚血と再灌流を行いrecombinant superoxide dismutase(mt-SOD)の投与法により3群に分けた. A群(対象群, n=7)としては再灌流1分前に大動脈基部より生理的食塩水12ml投与し, 引き続いて生食50mlを人工心肺回路内に30分間持続投与した. B群(冠動脈内投与群, n=7)としては再灌流1分前に大動脈基部注入により直接虚血心筋にrt-SOD(10,000u/kg)を投与し, 更に, 30,000u/kgを30分間人工心肺回路に持続投与した. C群(人工心肺投与群, n=7)としては再灌流1分前にrt-SOD(10,000u/kg)を人工心肺回路内に投与し, 持続投与は, B群と同様に行った. 心機能の評価は, 右心バイパス法を用いて, 1回左室仕事係数の回復率として求めた. 再灌流60分後(左房圧5mmHg)の回復率は, A群:24±38%*, B群:121±82%, C群:52±21%*であり, B群のみ良好の回復を示した(*p<0.05). 冠静脈洞血CPKは, B群は再灌流15分, 30分値でA群に比し低値を示していた. MDAは, 虚血・再灌流を通して, 3群間に差を認めなかった. 電子顕微鏡像では, A群, C群において, ミトコンドリアの腫大, 空胞化, 一部で破壊像を認め, 筋原線維の不鮮明化を示したのに対し, B群はほぼ正常像であった. 以上より, フリーのSODを用いる場合, 再灌流直前に大動脈基部注入により直接虚血心筋に投与する方法は, 効果が確実で, 全身投与法より優れていた. |