アブストラクト(38巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 純型僧帽弁狭窄症に対する人工弁置換術後の右心機能
Subtitle : 原著
Authors : 谷口巌, 森透
Authors(kana) :
Organization : 鳥取大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 7
Page : 1135-1144
Year/Month : 1990 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症は, 本来, 右室に対しては慢性的圧負荷疾患であるが, 右室機能についてはいまだ十分には評価されていない. 本研究は対象を純型僧帽弁狭窄症に対するMVR(SJM 29~31mm)の症例9名とし, 術後右室機能を検討した. 安静時と仰臥位エルゴメーター負荷時に心内圧, 心拍出量測定, 左右心室造影を行った. そして, area-length法により左右心室の拡張末期, 収縮末期容量を計測し, 心筋収縮能の指標として心室収縮期圧(SP)と収縮末期容量係数(ESVI)からSP/ESVIを求めた. 対照は32名の正常者とした. このうち5名ではエルゴメーター負荷による検査を行った. 対照群では安静時, 運動負荷時ともに右室駆出率(RVEF)とRVSP/ESVIに有意の相関が見られ, RVSP/ESVIは右室心筋収縮力の指標となる可能性が示唆された. 安静時の両群の比較においてMVR群の全肺抵抗係数(TPRI), 肺血管抵抗係数(PARI)が有意に高く, RVEFが有意に小さかった. しかしRVSP/ESVIに有意差は無かった. 運動負荷による比較では, 対照群のTPRI, PARIは変化しなかったが, RVEFは有意に増加した. 一方, MVR群ではTPRIは有意に増加し, RVEFは変化しなかった. しかしながら, RVSP/ESVIは両群とも同程度に増強していた. 以上から, 純型僧帽弁狭窄症は人工弁置換によって弁機能を改善後もなお且つ右室ポンプ機能の障害を認め, その原因は主に慢性的圧負荷に伴う不可逆的肺血管障害による右室後負荷増強によるものであって, 右室心筋収縮力の低下による影響は大きくはないと結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 僧帽弁置換術, 右心機能, 右室収縮能指標, 運動負荷
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