Abstract : |
氷温保存とは0℃以下のマイナス未凍結温度領域で物質を保存する方法である. 今回, われわれはラット摘出灌流心を用いて氷温による心保存の心機能に対する影響を検討した, Working heart法で好気的灌流を行い心停止前値を測定し, 次いで心停止液を用いて心停止とし保存液中に4時間単純浸漬保存した. 4時間保存後, 好気的再灌流を行った. 保存液, 心筋温を4℃の群(4℃群), 氷温における群(0℃;氷温群), 保存液にVerapamil(0.5mg/l). を添加し氷温で保存した群(氷温Ve群)の3つの群に分けて比較検討した. 心機能は回復率を求め, 平均±S. D. で表示した. Cardiac Outputの回復率は4℃群33.5±16.7%, 氷温群62.5±10.5%, 氷温Ve群74.2±10.3%を示し, 4℃群に対して氷温群, 氷温Ve群は有意に良好な改善を示した(p<0.01). また, 氷温群に対して氷温Ve群は有意に良好な改善を示した(p<0.05). 心筋内ATPは心停止前18.9±2.68μg/mg, 心保存4時間後4℃群13.9±3.01μg/mg, 氷温群18.7±1.48μg/mg, 氷温Ve群18.3±3.12μg/mgを示した. 心保存4時間後の心筋内ATPは4℃群に対して氷温群, 氷温Ve群は有意に高く保持された(p<0.05). 以上より, 1. 氷温で心臓を保存すると, 保存後再灌流時の心機能は良好に保たれた. 2. 氷温保存では, 心筋内高エネルギーリン酸化合物の低下は抑制された. 3. 従って, 心臓の保存において氷温は保存時間の延長, 保存後の良好な心機能の維持にとって有用である. 4. 更に氷温保存にVerapamilを併用すると再灌流時の心機能は氷温のみの時よりも良好であることより, 氷温保存に虚血, 再灌流障害を防ぐ薬剤を併用することが, 保存後の心機能維持に有用と思われた. |