Abstract : |
三尖弁閉鎖不全症(以下TR)を伴う連合弁膜症では, 肝障害を伴うことが多く術後の凝固系にも影響を及ぼすと考えられる. 当教室において人工弁置換術を施行した75例において, TRを合併し三尖弁に対し手術操作を加えた連合弁膜症29例(TR群)と, 対照群46例との凝固系の変動を検討した. TR群は対照群に比し手術時間, 出血時間が高値を示し(p<0.01), 総Bilirubin, GPTが高値を示す例が多く, 術前ICG停滞率も対照群に比べTR群で高値であった(p<0.01). TR群は対照群よりも血小板数は術後有意に低く(p<0.01), Fibrinogenは低下傾向を示し, FDPは有意に高値を示した(p<0.01). Antithrombin IIIは術後はTR群において対照群に比べ低下傾向を示した. 出血時間, APTTは両群間で差は認められなかった. TR群では術前既にTT, PTが対照群に比べ有意に低値を示し(p<0.01), 術後早期も低下傾向を示した. TR合併連合弁膜症では外因性凝固因子低下による出血傾向を伴うことが多く, これには肝障害の影響が考えられた. |