Abstract : |
冠動脈再建術を受ける患者の多くは, 術前までβブロッカーを含む抗狭心症治療薬の投与を受けている. これら患者のうち多くは術後再灌流に伴う上室性頻脈を来すことが多く, その治療にベラパミール(ワソラン(R))が使用されている. しかしβブロッカー, ベラパミールともに心筋収縮力を低下させることが知られ, 術後の循環不安定な時期においてその相乗効果の程度を明確に理解する必要がある. この相乗効果の程度を心筋固有収縮力を示す収縮末期左室圧-径関係(Emax)を用ちいて評価した. 18頭の羊を用い, 超音波トランスデューサーを左室後壁, 前壁及び前壁心内膜, 心外膜側に植え込み左室短軸内径を測定した. 心尖部よりカテ先マイクロマノメーターを左室内に留置し左室内圧を得た. プロプラノロール(0.15mg/kg)単独投与群では各指標に有意の変化は見られなかったが, ベラパミール(0.15mg/kg)単独投与群では平均動脈圧(MAP), max dp/dt及びEmaxの有意の低下が見られた(4.54±0.77mmHg/mm, コントロール群;7.98±0.83). 両剤を同時に投与した併用群では心拍出量, MAP, 左室収縮末期圧, max dp/dt, min dp/dt, 及びEmaxの有意の低下(2.95±0.24)と, 左房圧, 中心静脈圧, 左室収縮及び拡張末期圧の上昇が見られた. 両剤の併用により左室固有心機能は各単独投与群よりも有意に低下した. βブロッカーを手術直前まで投与された患者には, ベラパミール投与は心機能上不利であることが示唆された. |