Abstract : |
肺扁平上皮癌切除86例についてパラフィン包理ブロックよりFlow cytometryを用いて核DNA量解析を行い, 癌腫の発生部位を含め種々の臨床病理学的事項や予後, 再発形式との関連性について検討した. DNA aneuploid例の頻度は86例中64例74.4%と高率であり, 進行癌に高かった. また, 核DNA量は肺門型と肺野型で差はなく発生部位別でその細胞生物学的特性に差は少ないと思われた. 他病死を除く64例の予後は2生率, 5生率はDNA diploid例の16例は共に81%で術後2年以後の再発がないのに対して, DNA aneuploid例の48例のそれは46%, 27%と術後2年以後の再発がみられ, 後者は前者に比べて有意(p<0.01)に予後不良であった. また, 相対的治癒切除20例も同様であり, I期や絶対的治癒切除例も同様の傾向があり, DNA aneuploid例はDNA diploid例に比べより細胞学的悪性度が高いと考えられた. 術後の再発形式は絶対的治癒切除例は遠隔転移が多く, 特にDNA aneuploid例に高率であり, 相対的治癒切除例も同様の傾向が認められた. 以上のことより, 肺扁平上皮癌はその癌腫の発生部位別より, むしろ発生した癌細胞の細胞レベルの悪性度(DNA ploidy)が予後や再発形式に重要であり, DNA aneuploid例ならば遠隔転移を主体とした再発が多く治癒切除例でも強力な補助化学療法の併用と共に長期のfollow upが必要と思われた. |