Abstract : |
心停止中の心臓に超音波を照射することは心筋保護に有用であるが, その作用機序は明らかではない. そこで心停止中に超音波照射を行い, 同時に心停止液にATPを添加して超音波照射とATPとの相互作用について, 特に心筋内高エネルギーリン酸化合物動態の面から検討した. 超音波照射(UI)と心停止液へのATPの添加(ATP)の有無によりI群[UI(-), ATP(-)], II群[UI(-), ATP(+)], III群[UI(+), ATP(-)], 及びIV群[UI(+), ATP(+)]に分け比較した. working heart法で灌流後, 心停止液を用いて37℃20分間の心停止を施行した, 超音波照射は心停止中に連続波で行い引き続き30分間再灌流した. 心筋内高エネルギーリン酸化合物は心停止前, 心停止20分後に心臓を瞬間凍結し, Luciferin-Luciferase法にて測定した. 心筋内ATP量は心停止20分後にはI群12.4±5.40nmol/mg protein, II群20.2±1.64, III群14.5±3.97, IV群32.46±2.74を示し, 心停止前値32.6±4.62に対してI, II, III群は有意な低下(P<0.01)を示した. これに対してIV群では低下を認めなかった. また心停止後の心機能の回復率はII, III, IV群が良好であった. 以上より外因性ATPの存在下で心筋への超音波照射が心停止中の心筋内ATP減少を抑制することが可能であり, これが心停止後の心機能の改善に関与していると推測され, 心筋保護に有用であることが示唆された. |