アブストラクト(38巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道癌症例における呼吸筋の組織化学的分析-術後肺合併症との関連について-
Subtitle : 原著
Authors : 渡部宜久, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 9
Page : 1395-1401
Year/Month : 1990 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌手術症例における術後肺合併症の重要な原因として, 術前の低栄養状態の関与が示唆されている. 本研究では特に低栄養による呼吸筋障害に注目し, 当科で手術が行われた食道癌32例と他臓器癌7例の計39例を対象として, 術中に横隔膜, 外肋間筋, 腹直筋の一部を採取し, これをadenosinetriphosphatase(ATPase)染色を用いてタイプ1線維(遅筋)とタイプ2線維(速筋)に染め分けて栄養障害の影響を検討した. 各筋における分析項目はタイプ別の筋線維断面積, 筋線維構成, 断面積占有率の3つであるが, このうち特に骨格筋の最大収縮力を表す筋線維断面積と, 収縮特性の指標となる断面積占有率に注目した. 全症例の平均値で見ると, 横隔膜では筋線維断面積・断面積占有率のいずれにおいてもタイプ間に差はなかった. 外肋間筋ではタイプ1線維が優位であり, 腹直筋ではこれとは逆にタイプ2線維が太く占有率も高かった. 栄養状態との関係についてみると筋線維断面積は各筋とも栄養良好例は太く, 不良例では細く収縮力の低下が推測された. また横隔膜におけるタイプ1線維の断面積は, 胸部透視画像解析による横隔膜収縮率と正の相関がみられた. 横隔膜の断面積占有率は, 栄養不良例でタイプ1の割合が少なく筋肉の持久力の低下が推定された. 外肋間筋・腹直筋は横隔膜とは逆に栄養不良例でタイプ2の割合が少なく, 栄養障害により筋肉の瞬発力が低下するものと推定された. 食道癌症例を横隔膜のタイプ1線維の断面積占有率が50%以上の群と, 50%未満の群に分けると50%未満の群で有意に(p<0.02)肺合併症の発生率が高く, 低栄養による呼吸筋機能障害と術後肺合併症の関連性が示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌, 術後肺合併症, 横隔膜, ATPase染色, 呼吸筋機能
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