Authors : |
斎藤貴生, 桑原亮彦, 平尾悦郎, 重光祐司, 木下忠彦, 掛谷和俊, 下田勝広, 宮原正樹, 小林迪夫 |
Abstract : |
食道癌に対する三領域リンパ節郭清の適応範囲を拡大することを目的とし, 全身状態の障害が中等度の症例に二期分割による三領域郭清を実施し, その意義及び問題点について検討した. 昭和61年1月より63年12月までに入院した食道癌58例のうち, 頸部食道癌を除く切除例は38例で, このうち26例(68%)に三領域郭清を実施し, うち13例は二期分割術式によった. 三領域郭清の手術適応は, 75歳以下で, C1~C3が期待され, 全身状態の障害が中程度までの症例とし, 全身状態の障害が無いか軽度の症例には一期手術を, 中等度の症例には二期分割手術を行った. 全身状態は, 既往・合併疾患, 重要臓器機能, 生体防御能で評価した. 二期分割による術式は, 第一次手術で食道亜全摘と上縦隔を含む胸部リンパ節郭清, 第二次手術で食道再建, 頸部及び腹部リンパ節郭清を行った. 一期手術群(一期群)と二期分割手術群(二期群)を比較すると, 二期群でやや高齢者が多く, 一期群にやや癌の進行した例が多かった. 全身状態では, 二期群の方が, 重要臓器機能, 生体防御能とも不良であった. 手術時間, 術中出血量は, 二期群(第一次手術)の方が一期群の約半分程度で, 術後合併症の発生も二期群の方で少ない傾向がみられた. また, リンパ節転移率, 術後のリンパ節再発率, 3年累積生存率は両群間で差をみなかった. 以上より, 二期分割による三領域郭清術式は, 手術侵襲の軽減, 術後合併症の減少傾向をもたらし, また, 頸部及び腹部リンパ節郭清の遅延に伴うリンパ節転移や癌再発への悪影響もみられないことから, 三領域郭清の適応を拡大する上で有用な術式と考えられる. |