Abstract : |
心肺及び肺移植術において, 肺保存法の確立は重要な課題であり, 現在, 許容時間は2~3時間と極めて短い. そこで, 本研究では肺保存後の再灌流障害の肺胞系変化について検討した. 6頭の豚(20~22kg)を用いて, 左肺気管支及び動静脈を完全遮断し, UCLA溶液(300ml)にて灌流した後, 常温にて3時間虚血状態を維持した. その後, 遮断解除し, 再灌流障害を誘導後, 右肺動脈遮断し, 虚血肺における肺動脈圧, 肺静止コンプライアンス, 肺組織像について虚血後3時間まで測定した. その後, 肺洗浄により, 肺胞内成分を生食水中に採取し, 肺胞内飽和燐脂質含有量(サーファクタント量), 蛋白質含有量をMalate法, Lowry法により測定した. 再灌流前肺動脈圧(mmHg)は34.0±8.1, 再灌流後85.4±8.7と上昇した(p<0.001). 肺コンプライアンス(ml/cmH20)は虚血前0.52±0.07, 再灌流後では0.31±0.1と低下した(p<0.01). 細胞内サーファクタント量は左/右肺比で252.5±87.7%と著しく増加し, 同様に蛋白質量は289.5±137%と有意な増加を認めた. 組織所見では, 虚血3時間後では有意な変化は認められなかったが, 再灌流後に広範な肺胞構築の構築の障害がみられた. これらの結果より, 再灌流障害は肺上皮細胞を破壊し, 肺胞系にサーファクタント及び蛋白質を含む浸出液が貯溜し, 肺コンプライアンスの低下を導くと考えられた. |