Abstract : |
胃軸捻転症を伴った成人のBochdalek孔ヘルニアはまれな疾患である. 今回, われわれは胃軸捻転症を伴い成人になって始めて発見されたBochdalek孔ヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は23歳男子, 左胸部痛, 嘔気, 嘔吐で発症した, 胸部X線, 胸部CT, 胃透視にて胃軸捻転症を伴う横隔膜ヘルニアと診断された. 手術所見では左横隔膜外側後方に10×4cmの横隔膜欠損を認め, これより胃, 横行結腸, 脾, 大網が左胸腔内へ嵌入しており胃軸捻転症を伴うBochdalek孔ヘルニアと診断された. 文献的に調べ得た胃軸捻転症を伴った成人のBochdalek孔ヘルニアは4例しかなく極めてまれである. われわれの症例は胸腔内に嵌入した腹腔内臓器は経胸的手術で容易に還納整復することができ術後経過も順調であった. 胃軸捻転も術後正常に復していることが確認された. Bochdalek孔ヘルニアは先天性横隔膜ヘルニアの中では最も頻度が高く, 多くは生後まもなく発症し, しばしば緊急手術を必要とする疾患であるが, まれには軽症あるいは無症状に経過し成人になって始めて発見される場合がある1). また, Bochdalek孔ヘルニアは多くの他の先天異常も合併しているといわれる2). |