Abstract : |
悪性限局型胸膜中皮腫の1手術例を経験したので報告する. 患者は, 63歳男性で血痰を主訴として来院した. 肺腫瘍の疑いで右肺上葉切除術及び広範囲リンパ節郭清術を施行した. 腫瘍は肺内に埋没するように発育しており胸壁浸潤はなかった. 術後放射線療法を追加したが5ヵ月目に再発し7ヵ月で死亡した. 再発形態からびまん型移行例と考えられた. 本疾患の予後はよくないとされているが, 長期生存例もみられるため, この機会に本邦の切除例を検討した. その結果, 腫瘍の肉眼的所見上, 肺胸膜発生例で肺内に埋没するように発育するものは予後が悪く, 壁側胸膜発生例は予後にばらつきがあるものの鑑別点を見いだせなかった. びまん型移行例は本症例を含め6例あったが, そのうち5例が上皮成分を含む組織型であり, 今後検討が必要と思われた. 胸膜中皮腫は, Klemperer1), Stoutら2)が限局型とびまん型に分類することを提唱して以来, 報告例が増加し, 病態が徐々に解明されてきている, しかし, 限局型とびまん型の移行型3)4), あるいは, 限局型からびまん型への移行例5)~9)も報告されており不明な点も多い. |