Abstract : |
71歳, 男性. 42年前左肺結核症で人工気胸術の既往がある, 昭和63年2月, 血痰を主訴に来院した. 同年10月, 喀痰細胞診で悪性細胞が認められ, 精査入院した. 左気管支洗浄液から悪性細胞(大細胞癌疑)が認められたため, 左肺癌の診断で, 平成元年1月12日に左胸膜肺全摘出術を施行した. 術中病理検査で腫瘍の遺残がないことを確かめ手術を終了したが, 術後の同検査で腫瘍の一部が横隔膜上に遺残したことが判明した. 術後病理診断はびまん性大細胞性B細胞型非ホジキン性リンパ腫であった. CHOP, VP-16療法を2クール施行したが, 術後125日目に腫瘍死した. 近年, 陳旧性胸膜炎や人工気胸後の胸膜に発生した悪性リンパ腫の報告例が増加していることから, 常に本症の存在を念頭におき, 画像診断上, 腫瘍が疑われる時は, 確定診断をすすめ, 早期に治療を開始することが望ましい. 最近, 陳旧性胸膜炎や人工気胸術後の膿胸壁に発生したと思われる, 悪性腫瘍の報告例がみられる1)~10). われわれも, 肺結核症に対する人工気胸術後42年を経て, 膿胸壁に発生した非ホジキン悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する. |