Authors : |
岡本浩1), 保浦賢三1), 松浦昭雄1), 秋田利明1), 沢崎優1), 阿部稔雄1), 関章2), 小川裕3), 星野元明4) |
Abstract : |
開心術後の胸骨感染, 前縦隔炎は致命率の高い重篤な合併症である. 最近7年間に教室及び関連施設で行った開心術852例中, 胸骨感染, 前縦隔炎を19例(2.2%)に認め, 6例(31.6%)が死亡した. 疾患別では虚血性心疾患10例, 弁膜症6例, 両者の複合1例, 先天性心疾患2例であった. 起炎菌はStaphylococcus aureusが8例と最も多く, Enterobacter cloacae 3例, Enterobacter aerogenes 1例, Pseudomonas aeruginosa 2例, Serratia marcescens 1例, candida albicans 1例の順であった. 初期の症例は洗浄法を主体に治療したが, 最近の6例では形成外科的再建(大網移植4例, 大胸筋弁1例, 腹直筋皮弁1例)を行った. 術前, 術中, 術後の諸因子と創治癒及び生命予後との関連についての検討から, 創治癒には形成外科的再建の有無, 起炎菌の種類(特に黄色ブドウ球菌, 真菌)が, 生命予後には感染性心内膜炎, 腎不全, 形成外科的再建の有無が有意であった. 死亡例のほとんどは感染が心大血管の縫合線や人工異物に及んだためで, そうなる前に感染巣を除去する治療が必要と考えられた. 従って1~2週間洗浄を行って治癒傾向がなければ早期に形成外科的再建を行うべきである. また, 心表面に人工血管やパッチなどの異物が縫着されている場合は再建を準緊急的に行う必要がある. 再建法としては感染に強く, 空間的適合性のよい大網移植を好んで用い良好な結果を得た. |