Abstract : |
脳塞栓症を合併した心疾患の急性期開心術の安全性と問題点について検討した. 対象は, 過去9年間に脳塞栓症と診断された心疾患のうち, 心エコー図で遊離の危険性を有する塞栓子が確認されたもの, 又は塞栓の再発例に対して, 初回脳塞栓発症後2週間以内に開心術を施行した感染性弁膜疾患(いずれも活動期)5例(I群), 非感染性弁膜疾患(MSを合併)7例(II群)及び左房粘液腫2例(III群)の計14例である. 初回脳塞栓発症より手術施行までの期間(平均7日間)に, その50%に塞栓の再発を認めた. 全例に術前頭部CT検査を施行し出血性変化のないことを確認したが, I群中の大梗塞と診断された3例のうち2例を脳出血で, 1例を脳浮腫で失った. 脳出血で死亡した2例は, その出血様式よりmycotic aneurysm破裂が疑われた. I群中の小梗塞の2例を, またII, III群では大梗塞例を含め全例救命した. 以上の結果より以下に示す結論を得た. 1. 小梗塞例においては, 感染の有無を問わず急性期開心術を施行すべきである. 2. 大梗塞例のうち非感染性症例では, 術前の頭部CT検査で明らかな脳浮腫や出血性変化がない限り, 急性期開心術も考慮すべきである. 3. 大梗塞例のうち感染性症例では, 術前の頭部CT検査において, 脳浮腫や出血性変化がなくても急性期開心術の成績は極めて不良のため, 特に感染性心疾患においては脳塞栓合併前に手術すべきである. |