アブストラクト(38巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 逆行性心筋保護法の電気生理学的検討-特に右心系に対する保護効果の実態と対策-
Subtitle : 原著
Authors : 宇都宮英敏, 池下正敏, 庄司佑
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 10
Page : 2039-2048
Year/Month : 1990 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 高度冠動脈病変の手術の増加に伴い, 狭窄部末梢心筋への保護効果に優れた逆行性心筋保護法が, 再評価されてきた. しかし当方法は従来より, 右心系に対する保護効果に疑問が持たれている. そこで雑種成犬を用い, 電気生理学的検討を中心に, 右心系に対する保護効果を検討した. I群:冠静脈洞よりGIK液を注入. II群:GIK液にdiltiazemを添加. III群:順行性にGIK液を注入. 以上3群間で比較検討した. 最低心筋温, 冷却効果などの温度に関する諸因子は, 3群及び左, 右心系間で有意差はなかった. 双極電極を用いた検討では, I群はelectrical activityの消失が遅れ, 且つ遮断中早期に再出現する. またI群でも右心系は左心系に比較し有意に同様の結果を示した. 単極電極を用いたQRS波のamplitudeの, 虚血前後の回復率による検討では, I群の右心室は44.1±29.3%と著明に低値であったが, diltiazemを添加したII群では78.7±28.2%と改善し, 他の諸因子もIII群と同様の結果となった. 電顕による心筋微細構造の検討でも, I群では右心系が不良であったが, II群ではIII群同様, 良好に保たれていた. このように逆行性心筋保護法は, 右心系に対する保護効果が不十分で, その原因は電気的完全心停止の不備にあると考えられた. しかしCa++拮抗剤を添加することにより, 右心系への保護効果が高まり, 従来の順行性心筋保護法と同様, 安全な臨床応用が可能と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 逆行性心筋保護法, 冠静脈洞, 電気生理学, 心筋温, カルシウム拮抗剤
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