Abstract : |
僧帽弁膜症を主病変とする後天性弁膜症(VHD)と成人の二次孔心房中隔欠損症(ASD)に続発する三尖弁閉鎖不全症(二次性TR)の成因, 及び弁輪縫縮術(TAP)の効果について比較検討した. 対象はTRを合併したVHD 50例とASD 20例であり, TRの評価は著者らの考案した超音波ドップラー法による1心拍当りの逆流量(VTR)に基づいて行った. 両疾患とも, 術中所見との対比によりVTR=10ccを境としてTR放置例と処置例を区別し得た. VTRの術前後の推移をみると, 術前VTR<10ccではVHDの18例, ASDの10例ともTRは放置されたが術後VTRは漸減した. VTR=10~20ccでは, VHDの19例中18例, ASDの5例全例にTAPが行われ, 術後VTRは全例10cc以下に改善した. VTR≧20ccでは, VHDの13例中11例(他2例はTVR)及びASDの5例全例にTAPが行われ, VHD例のTAP 3例で有意(10~20cc)のVTRが残存した以外は全例10cc以下に著明に改善した. また, このTR残存群3例とTVR 2例の術前三尖弁輪径(TAD)は50mm以上であり, 他のVHD例とは明確に区別し得た. 一方, ASD例では術前TAD 50mm以上の4例を含む全例でTAPにより術後VTRは10cc以下に改善した. この両疾患におけるTAP効果の差異は, TADに相対する逆流量(VTR)の違いから生じていた. すなわち, VTRをx軸, TADをy軸とすれば, その相関式はVHD例ではy=0.50x+34.4(r=0.83), ASD例ではy=0.75x+35.2(r=0.86)となり, ASD例でその傾きがより急峻であった. すなわち, 同程度のTADをもつ症例ではASD例の方がVHD例に比し逆流量(VTR)が少ない傾向にあり, これが高度弁輪拡大例に対する両疾患のTAP効果の差異の原因と考えられた. |