Abstract : |
ペースメーカー植込み症例の急性期群20例と, 慢性期群12例の血行動態から, 房室同期伝導, 心拍数増加, 運動負荷が完全房室ブロック群(CAVB)と洞機能不全群(SSS)の2群の心機能に与える影響を検討した. 急性期群において心拍数増加の影響をみると, Cl, mPA, PaWP, CVPなどは生理的ペーシング(AAI, VAT及びDVI)によりCAVB, SSS共著明に改善されたが, SSSに対して非生理的ペーシング(VVI)を行うと心拍数増加により心機能は, 不変, 又はかえって悪化傾向を認めた. 慢性期群においては, CIはレート応答型心室ペーシング(VVIR), 同心房ペーシング(AAIR)ともに運動負荷, 心拍数増加のいずれによっても増加した. 但し, CIの絶対値, 増加率ともAAIRでより大きく, 房室同期伝導の有用性が確認され, 特に高心拍数にて著明であった. 心室収縮能の指標となる左室駆出分画, 左室駆出率は, AAIRでは運動負荷, 心拍数増加のいずれによっても増加した. VVIRでら心拍数増加によりかえって低下した. 心室拡張能の指標となる左室充満率もAAIRでは運動負荷, 心拍数増加により改善したが, VVIRでは逆に悪化傾向を示した. 以上より次の結論を得た. 1. ペーシング時の心機能に与える最も重要な要因は房室同期伝導を保つことであり, 次いで心拍数増加, 運動負荷と続く. 2. 高心拍数による心室ペーシングが左室拡張能の悪化による心機能への悪影響がみられ, これはSSSの心室ペーシングで著明であった. 3. 従って, 正常な房室伝導能を有するSSSにはRR-AAIを, 心房細動を伴わないCAVB, 房室伝導障害を伴うSSSにはDDDペーシングが適応となろう. |