Abstract : |
1980年代になり肥大型閉塞性心筋症(HOCM)に対する手術成績の報告も, 症例数が増え, 次第に術後予後の全貌が明らかになりつつある. 術式も様々なアプローチがこれまで試みられてきたが, 現在は経大動脈弁的心筋切除術が最も広く支持されている. これらの報告から察し得ることは, 心筋切除術には, 左室流出路の狭窄の解除という効果のみならず, 僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)の消失, 更に術後遠隔期にわたり左室容積, 左室壁厚が正常化していくことなど, 姑息的治療という概念に止まらない治療効果があることである. 当センターでも4年5ヵ月間に, 22例のHOCMの手術治療を経験した. 全例に経大動脈弁的アプローチにて, 心筋切除術を施行した. 術中合併症として, 67歳の女性1例に心筋切除後VSDを認め, パッチ閉鎖術を施行した. この症例は体外循環離脱, 術直後の血行動態に問題はなかったが, 術後第1病日急性腹症にて死亡した. 遠隔期死亡は1例も認めなかった. 3ヵ月以上追跡調査を行った14例いずれにも, 著しい症状の改善と運動制限の緩和を認めた. 左室流出路の閉塞が, 十分解除されたかどうかの判定法として, Brockenbrough現象の消失を術中確認することが有効であった. |