Abstract : |
心室・弁輪連続性(VAC)温存する僧帽弁置換術式(MVR)に対して臨床検討を行ったので報告する. 対象は1984年4月~1988年12月の間に施行した単独MVR 53例で, VAC非温存MVR群(G-1)12例, 後尖部のVAC温存MVR群(G-2)33例, 前後尖部VAC温存MVR群(G-3)8例であった. 各群にMS, MSR, MRを含み各群間にばらつきが見られた. 3群に対して手術及び手術周辺状況, 心機能の変化に臨床検討を加え以下の結論を得た. 1. MRに対しては前尖部及び後尖部のVAC温存するMVRは容易に施行できる. 弁下組織変化の強いMSに対しては, 後尖部のVAC温存は比較的容易であるが, 前尖部はchordoplasty, papilloplastyを加えても困難な症例があり, かかる症例に対しては弁縫着の安全性を第1に考慮するべきである. 2. 通常の心臓カテーテル検査ではVAC温存する術式の優位性を示す有意差を認める指標はなかった. 心エコーを用いた術後6ヵ月を経た遠隔期における心拍補正mean Vcfと収縮末期左室壁応力関連ではVAC温存術式の心機能維持に対する優位性がうかがわれた. 局所左室収縮能ではVAC温存群で, Diaphragma及びAnterolateral areaの収縮能の優位性が示された. 3. 本術式に伴う残存術式の運命を含め長期遠隔期の評価を厳重に行う必要がある. 今後は, MRに対しては積極的に本術式を行い, MSに対しては特に前尖部位に対しては弁縫着に無理のない程度に行う方針である. |