Abstract : |
先天性心疾患に合併する肺高血圧症の病理発生や病変の可逆性, 治療法等を検討するために再現性の良い実験モデルを考案した. いままで報告された一肺葉の実験モデルでは, 手術死亡率が高く, 必ずしも安定して血管病変を作成することができず, 更に, 肺血管床や肺実質に, 実際の肺高血圧症には見られないような急激な変化が生ずる等, 問題も多い. これらの点を解決するため, 今回, 胸壁外から絞扼度を調節するbandingの装置を考案し, 胸部下行大動脈-左肺動脈吻合モデルに使用して徐々にdebandingを行うことにより, 高い生存率で肺血管病変を発生させることに成功した. 生後5~8ヵ月の雑種幼若犬20頭で実験を行い18頭に長期生存が得られ, 13頭に肺血管病変が発生した. 病変発生は, 術後1週で中膜の反応が始まり次第に肥厚した. 約2ヵ月で, Heath & Edwards 2度の病変が発生し, 3ヵ月では3度病変, 5ヵ月を越えると4度以上の進行した病変が左の全肺葉に発生した. このような広範囲な病変発生モデルは, 著者らの知る所, 今までに報告がない. このモデルは右と左の全肺を比較することができ, 圧負荷のコントロールが容易なことから, 今後多方面の研究への応用が期待される. |