Authors : |
高橋俊樹1), 中埜粛1), 松田暉1), 谷口和博1), 松村龍一1), 平田展章1), 榊原哲夫2), 酒井敬3), 広瀬一4), 川島康生1) |
Abstract : |
心筋梗塞後狭心症に対するA-Cバイパス術85例について, 術前12誘導心電図より算出した梗塞範囲より, 術後遠隔期における臨床症状, 心室性不整脈及び左室機能について検討した. 1. 対象を梗塞範囲20%以上の心筋梗塞症例の24例(A群)と20%未満症例の61例(B群)に分け検討すると, a. A, B群ともに術後の臨床症状の改善は明らかであった. b. A群ではB群に比し重症心室性不整脈の発生が有意に高率であった(83% vs 21%, p<0.01). c. A群では, 術後安静時左室拡張末期圧, 左室駆出率, 左室収縮末期容積指数は改善しなかった(17±9→16±8mmHg, 39±15→40±15%, 66±28→69±40ml/M2)が, B群では各々有意に改善した(13±6→11±5mmHg・p<0.01, 53±14→58±10%・p<0.01, 39±23→32±14ml/M2・p<0.05). d. 運動負荷を施行した症例では, A, B群ともに安静時に対する運動負荷時の左室一回仕事係数比は術後有意に改善した(A群:86±24→160±56%・p<0.05, B群:92±31→140±37・p<0.05). 2. 術前の梗塞範囲と術後左室駆出率, 左室収縮末期容積指数の間には, 各々有意の相関を認めた(r=-0.772・p<0.001, r=0.848・p<0.001). 以上より, 術前の梗塞範囲が20%以上の広範囲心筋梗塞例では, 冠血行再建術による安静時左室機能の改善は認められなかったが, 運動負荷時左室機能は改善することが明らかとなった. しかし, かかる症例においては, 術後高率に重症心室性不整脈の発生を認め, 術後遠隔期の管理上重要な問題と考えられた. |