Abstract : |
機械弁による大動脈弁置換術(AVR)後のvalve-patient mismatchの問題を解明し, あわせて至適弁サイズの推定を行うべく, AVR症例68例を対象として, 使用人工弁別に生体内弁機能, 及び術後左室心筋のreductionの程度を検討した. 生体内弁機能評価として術中圧測定及び術後心エコー連続波ドップラー法による左室-大動脈圧較差(LV-Ao PG)及び有効弁口面積(EOA)を測定し, 左室心筋のreductionの判定として胸部X線上のCTR, 心電図上のSV1+RV5, 心エコーMモードによる左室心筋量(LVM), 断層法によるcross sectional area(CSA)の推移を求めた. 結果は, 各人工弁ともLV-Ao PGは心拍出量と良好に相関し, 相関直線の傾き, すなわち心拍出量の増加に対するLV-Ao PGの増加の割合は弁口面積の小さい弁ほど大であった. 連続波ドップラー法によるEOA(EOA-echo)はSJM弁19mmで平均1.4cm2, Bjork-Shiley弁21mm 1.6cm2, 23mm 1.9cm2, Medtronic Hall弁21mm 1.7cm2, 23mm 2.1cm2となり, これらは術中圧測定からの計測値とも良好に相関した. 症例を有効弁口面積係数(EOAI-echo:EOA-echo/体表面積)により小口径群:0.88cm2/m2≦EOAI-echo<1.10cm2/m2, 大口径群:1.10cm2/m2≦EOAI-echo≦1.44cm2/m2の2群に分けて検討したところ, 両群間で術後遠隔期CTR, SV1+RV5に有意差はなく, LVM, CSAのreduction rateにも有意差を認めなかった. 以上より, 人工弁圧較差は弁の種類, サイズ及び心拍出量により決定されること, また少なくともEOAI-echoが0.88以上となるよう人工弁サイズを選択すれば, 人工弁の圧較差は左室後負荷として許容しうるものと考えられた. |