Abstract : |
TR残存率を低下させ, 且つ術後遠隔期における重症TRや悪液質への進展を防ぐことを目標として教室で行っている強めの三尖弁弁輪縫縮法について, その成績と, 同時に行った術中TR評価, 右室心筋組織像との関連などからその有用性について検討した. 1986年3月~1989年2月の間に当科で行った僧帽弁開心術症例29例を対象とした. 強めの弁輪縫縮法:DeVega法に従い縫縮サイズを逆流テストにて従来より強めの27mm(20例), 又は25mm(9例)に決定した. 手術近接死はなく, 超音波ドップラー法による評価で術後1年時のTR残存率は8.7%(2/23)であった. 術中TR評価:コントラストエコー, 指診, 心停止下の逆流テストと弁輪径計測, 再拍動下直接逆流観察を行ったが, 術後評価につながる術中評価方法は今のところ見いだせなかった. 術中右室心筋生検:体外循環開始前右室自由壁より心筋片を採取して光顕にて検討した. 心筋間質繊維化度(%fibrosis)は27.9%(13.4~42.9)で, 心筋横断径は19.5μm(13.0~30.7)であった. %fibrosisの30%以上群は30%未満群より, 術前のTR重症度(2.6 vs 2.0), 右房圧(10.6 vs 6.4mmHg), 肺動脈圧(47.3 vs 35.9mmHg)において有意に高値を示し, TRII度残存した. 2例はともに%fibrosis 30%以上を示し, TRと右室心筋繊維化との関連が示唆された. 一方, 心筋横断径と肺動脈圧の間にはr=0.56で正の相関を示した. 結論:1. 三尖弁閉鎖不全に対し, 従来より強めの27mm又は25mmにする弁輪縫縮術を行った. 2. この方法により術後TR残存率8.7%の結果を得られた. 3. 右室心筋繊維化度はTR重症度と関連があり, TR残存例に繊維化も進んでいた. |