Abstract : |
冠動脈バイパス術150例の術後遠隔期における心室性不整脈(VA)をHolter心電図を用いて検索し, VAと術前術後の諸因子並びに左室機能との関連性について検討した. 1. VAは42例(28%;A群)がLown分類4A~5度(重症VA), 108例(72%;B群)が0~3度であった:a. A群はB群に比し有意に高齢であった(60±5 vs 57±9歳, p<0.05). b. A群はB群に比し心筋梗塞の既往率が有意に高く(98 vs 46%, p<0.01), 梗塞既往例におけるSelvester score(梗塞範囲)が有意に高値であった(7.5±3.2 vs 2.6±1.9, p<0.01). c. 術前の冠動脈病変重症度及び冠血行再建率について両群間で差は認められなかった. d. A群はB群に比し術前術後共にLVEDP, ESVI, EDVIが有意に高値であり(術前:14±7 vs 11±5mmHg;p<0.05, 53±27ml/M2 vs 31±17ml/M2;p<0.01, 93±28ml/M2 vs 72±22ml/M2;p<0.01, 術後:14±7 vs 11±5mmHg;p<0.05, 53±35ml/M2 vs 30±14ml/M2;p<0.01, 90±36ml/M2 vs 74±21ml/M2;p<0.01), LVEFが有意に低値であった(術前:44±15 vs 58±11%;p<0.01, 術後:44±15 vs 60±10%;p<0.01). すなわち, 大部分の重症VA発生例は術前に広範囲心筋梗塞の既往を有し, 術前及び術後の左室機能が低下していた. 2. 多変量解析の結果, 重症心室性不整脈の発生に最も強く関与する因子は, 心筋梗塞範囲であった. 3. 心室性不整脈の重症度(Lown分類)と心筋梗塞範囲との間には, 有意な順位相関が認められた(Spearman係数0.494, p<0.001). |