Abstract : |
Annuloaortic ectasia(AAE)に合併した, 弓部大動脈瘤症例において, 術前呼吸不全を呈した場合, それがAAEによる心不全のためか, 大動脈瘤による気道の圧排によるものかを鑑別することは, しばしば困難である. 症例は64歳, 男性. 呼吸困難と意識障害にて緊急入院. 胸部X線写真上, 肺うっ血, 心肥大を認め, CTでは上行, 弓部大動脈の拡大, 左主気管支の圧排を認めた. UCGでは大動脈根部の拡張及び4度の大動脈弁逆流(AR), 大動脈弁輪拡大の所見を得た. 動脈血ガス分析では, PaO2 143.9mmHg, PaCO2 64.1mmHgと高炭酸血症を認め, 緊急にBentall手術を施行したが, 高炭酸血症は改善せず, 二期的に脳分離体外循環下に, 弓部大動脈瘤切除, 人工血管置換術を施行した. 術後, 高炭酸血症は改善し, 2週間で呼吸器からの離脱に成功した. この症例に対し若干の文献的考察を加え報告する. 弓部大動脈瘤とAnnuloaortic ectasia(AAE)が合併した際に生じた急性呼吸不全が, どちらに起因するかを, 緊急の際に判断するには困難な場合がある. 今回, 著者らはこのような症例を経験し, 最終的には両者に対し外科治療を施行し, 良好な結果を得たので, 若干の文献的考察を加え報告する. |