Abstract : |
胸腺嚢腫は比較的まれな縦隔腫瘍とされてきたが, 近年その報告が増えている. 本院で経験した胸腺嚢腫は8例であり, これは全縦隔腫瘍の5.6%, 先天性嚢腫の35%を占めていた. 全例偶然に発見された胸部異常影の精査希望を主訴としていた. 1例を除いて自覚症状はなく, 全例に重症型無力症等の自己免疫疾患の合併症は見られなかった. 画像診断では単純写真では境界明瞭で, 辺縁平滑な淡い腫瘤影を示した. 胸部CTでは均一なwater density areaで見られた. また胸部MRIではT1強調画像でlow intensity area, T2強調画像でhigh intensity areaとして描出された. ガリウムシンチで異常集積像を認めた症例は無かった. 確定診断と治療のため全例に胸腺嚢腫摘出及び胸腺部分切除を原則とした手術を施行した. 摘出標本所見より悪性例はなく, その予後は良好であった. 嚢胞内貯留液は主に黄色透明であった. 嚢胞内貯留液は主に黄色透明であった. 嚢胞内貯留液成分の検討では, 蛋白・脂質はほとんど含まれていず, CA19-9の高値が認められた. これは術前診断の助けになると思う. 手術に対するriskのある症例において, 悪性化の所見に乏しい場合, 経皮的穿刺の適応も考慮される. |