Abstract : |
心筋梗塞急性期の心室性不整脈に対する手術法の1つとして, 左室切開を行うことなく経左房的にLugol液を左室内膜に塗布する方法は, すでに教室の実験からその有効性が示され臨床にも応用されている. この研究の目的は, 本法により発生する左脚ブロックなどが, 心機能に与える影響を検討することにある. 雑種成犬15頭を対象にし, 完全体外循環心筋保護液心停止下で経左房的に左室心内膜Lugol液塗布を行い, 肺動脈送血による流量を一定にして, 心内操作前後で左房圧, 左室圧, 大動脈圧, 左室壁短軸短縮率, 一回拍出量を測定した. 更に生理的食塩水を同様に心内膜に塗布し, これを対照とした. 結果は, Lugol液塗布群において, 操作後の平均左房圧, 左室拡張終期圧は操作前と比較して高値を示す傾向にあったが, 有意な差は認められなかった. また, 対照群との操作後の比較では, Lugol液塗布群の平均左房圧がやや高い傾向を示したが, 左室壁短軸短縮率ともに有意差は認められなかった. 従って, 心機能に対する影響は, この実験から認められず, 心筋梗塞急性期の心室性不整脈に対する本法は, 安全に臨床応用され得るものと考えられた. |