Abstract : |
成犬11頭(体重13.5±5.4kg)を対象として自己広背筋による左心系循環補助の可能性, 骨格筋疲労に及ぼす広背筋虚血の影響を実験的に検討した. I群(Control群)7頭では広背筋にいたる全側副血行切離直後に, またII群(Vascular delay群)4頭では側副血行切離後4~7週間後に, 一層の広背筋グラフトによる骨格筋心室(skeletal muscle ventricle:SMV)を作製した. 各種trained-pulse(burst-frequency:10~75Hz)刺激によりSMVを駆動, その収縮機能をテスト回路(preload=15, 25mmHg, afterload:70mmHg)を用いて検討した. SMV内圧, 1回駆出量は両群ともpreload及びburst-frequency増加と共に増加しpreload 25mmHg, 50Hz刺激時I群222±50mmHg, 15±7ml, II群182±17mmHg, 10±2mlと2群間に有意差を認めなかった. 連続駆動(60/min, 50Hz)における駆出持続時間はI群3.5±0.8min, II群32.4±14.0minとII群において明らかな疲労軽減効果を示した. Thermographyによる広背筋温度分布はI群では側副血行切離後末梢部の著しい温度低下を示したが, II群ではvascular-delayの結果ほぼ均一な温度分布を示し30℃以上の%Area:I群29.3±3.8%, II群77.0±10.1%であった. 駆動中の広背筋血行すなわち胸背動脈血流量はI群10.1±3.1ml/min/100g, II群15.0±3.7ml/min/100g(p<0.05)とII群で有意に良好であり, また広背筋酸素消費量(VO2)乳酸流出量(ΔLactate)は駆動中いずれもII群で有意に高値を示したが, 骨格筋代謝パターンを反映すると考えられるVO2-ΔLactate関係は両群間で同様であった. 以上から1. 広背筋は高頻度burst刺激により左心系補助に十分な収縮力を有すること2. vascular-delayの結果広背筋血流の改善が得られ骨格筋代謝パターンの変化を伴わずに急性期の疲労が軽減しうること, すなわち疲労発現における虚血の重要性が示された. |