Abstract : |
致死性頻脈性心室性不整脈を呈する症例に植え込み型除細動器(AICD)による治療を行う経験を得たのでその手術法, 適応及び問題点を中心に報告する. 症例は5例で診断はTorsade de Pointes型心室頻拍(Tdp)+心室細動(VF)1例, 特発性VF2例, 弁膜症術後心室頻拍(VT)1例, 弁膜症術後VT+VF1例で, 何れも薬剤抵抗性で直達手術の困難な症例であった. 弁膜症術後の2例に高度心機能低下を認めた. 4例に心蘇生の既往及び薬剤抵抗性のVFあるいはVFに移行するVTを認め, 他の1例も薬剤抵抗性で頻拍時に血行動態の増悪を来すVTを認め, AICDによる治療の適応と判断した. 手術は胸骨正中切開で行い, 再々手術例の2例には左前側開胸を加えた. 電極は感知電極として心筋電極を, 除細動電極としてパッチ電極の組合せを選択した. 除細動域値(DFT)測定のため1~6回の細動誘発を行い, また全例術中AICDによる除細動を確認した. 手術死亡はなく, AICD作動状況としては, 2例に自然VT発作に対して, また他の3例も電気生理学的検査により誘発されたVT, VFに対し良好に作動することを確認した. 合併症として低心機能例の1例にDFT測定直後にVT, VFの重積を認め補助循環を要し, 他の1例に術後1週間目にVT発作の重積を認めた. また2例に誤放電を, 2例に心膜炎を認めた. また2例にVTに対する意識覚醒下の放電時に強い苦痛感を認めた. 以上AICDによる致死性頻脈性心室性不整脈の治療は十分に期待できると考えられたが, 手術侵襲, 電池寿命, 誤放電, 放電時不快感など問題点も多く慎重な適応の判断と厳重な経過観察を要すると考えられた. |