Abstract : |
悪性線維性組織球腫(MFH)の縦隔発生例は極めてまれなものであり, また炎症型MFHの多くは後腹膜に存在するとされている. 今回われわれは, 縦隔原発の炎症型MFHの1例を経験したので報告する. 症例は58歳, 女性. 主訴は前胸部腫瘤, 不明熱, 貧血で他院にて縦隔腫瘍を指摘され, 精査治療目的で入院となった. 胸部X線像にて右上肺野に突出する前縦隔腫瘤を認め, 検査所見では強い炎症反応を伴っていた. 手術は腫瘍と胸骨, 第2, 3肋骨を含む右前胸壁, 右上・中葉, 心嚢の浸潤部を含め合併切除を施行した. 術後発熱は消失, 検査所見に見られた炎症反応も改善した. 病理組織所見にて, 類円形の組織球様細胞及び紡錘形の線維芽細胞が不規則に交錯, 配列し, 花むしろ模様が見られた. 更にXanthoma様のfoamy cellの小集団や炎症細胞浸潤が見られ, 炎症型MFHと診断した. 悪性線維性組織球腫(Malignant fibrous histiocytoma:以下MFH)は, 四肢, 躰幹, 後腹膜などを好発部位とする軟部悪性腫瘍で, その縦隔発生例は極めてまれなものである. |