Abstract : |
近年, 本邦においても内胸動脈(ITA)のin situでの使用は一般化しつつあるが, in situのみの使用では左回旋枝(LCX)及び右冠動脈(RCA)未梢部へのバイパスが著しく制限されるため1989年8月より60歳未満の22例の若年症例に対し, ITAをin situのみならず, より積極的に遊離グラフト(free ITA)とし, その中枢側を大動脈に直接吻合して冠動脈バイパス手術に使用した(free ITAG). 結果は良好で, 中枢側吻合部の出血による再開胸を1例に, 左横隔膜の一時的挙上を1例に認めたものの, 周術期心筋梗塞, 脳梗塞, 縦隔洞炎の合併やIABPを必要とした症例もなく全例症状の改善を認めた. 術後約1ヵ月に施行したグラフト造影でも中枢及び末梢側吻合に問題なく, 全グラフトが開存していた. この報告では術後観察期間が2~17ヵ月(平均9.4ヵ月)と短いため長期成績については今後の検討を要するが, 術後約1ヵ月におけるfree ITAの早期開存率は100%であり, 現在まで全例狭心症の再発を認めないことより, 本邦人においてもfree ITAGは可能であり, 長期生存率の向上が期待できるものと思われた. |