Authors : |
塚本三重生, 長谷川隆光, 北村信三, 進藤正二, 秋山謙次, 折目由紀彦, 原田泰, 鈴木修, 大畑正昭, 瀬在幸安 |
Abstract : |
SVGによるCABG症例を, 冠危険因子の影響及びグラフト閉塞の原因の1つであるといわれている静脈硬化性(あるいは動脈硬化性)の変化を中心に, 臨床的及び病理学的に検討した. 調査対象は1970年より1990年までに当教室で施行した大伏在静脈を用いたA-Cバイパス術のうち, 冠危険因子(喫煙, 高血圧, 高脂血症, 糖尿病, 肥満, 家族歴)の有無に関してデータの得られた182症例, のべ814枝とした. 早期(1年以内, 440枝),中期(5年以内, 280枝), 遠隔期(5年以上, 94枝)に分けて開存率を検討したところ早期には差がみられないものの中期, 遠隔期では冠危険因子, 特に高脂血症合併症例で開存率の低下が認められた. また, 手術時に採取した術前のSVG33枝の病理学的変化を検討すると, 冠危険因子6因子のうち, 3因子以上を有するhigh risk groupで内膜の肥厚, 中膜平滑筋細胞の肥厚など静脈硬化性変化が高率に認められ, 動脈硬化性因子は動脈のみならず静脈にも影響を及ぼすことが示唆された. CABG症例の55.5%に合併する高脂血症はこれらの因子の中で最も影響が大きく, 且つ, コントロールの困難な因子と考えられ, 高脂血症症例の多い欧米でSVGの成績が芳しくないのもこのためと思われた. 以上より, SVGの長期開存性には動脈硬化因子の除去が重要であり, 適応及び術後長期にわたる管理により長期開存の可能性のあるgraft materialであると考えられたが, これらの因子, 特に高脂血症をいかに管理して行くかが今後の課題として提起された. |