Abstract : |
心肺移植後の再灌流障害は大きな問題であり, その主因の1つにフリーラジカルの発生があげられる. 再灌流障害の予防目的にプロスタグランディンI2のアナログ(OP 41483-α-CD)を投与し, その効果をフリーラジカルの発生を中心に検討した. 犬を用い, Schaefersらの手技に準じ, 異所性心, 同所性肺移植を行い4時間保存の後再灌流した. 再灌流後発生するフリーラジカルの超微細分裂定数は15.5Gであり, PBN-OHであると考えられた. 心機能は, max dp/dt, 心拍出量のいずれにおいてもOP群が対照群より有意に良好であり, 肺静脈血の酸素分圧もOP群で良好であった. 全身血の血小板数は, 対照群で再灌流後有意に低下したが, OP群では低下しなかった. OPを肺静脈より投与すると, 冠静脈内フリーラジカルに変化はないが, 肺静脈内フリーラジカルは有意に低く抑えられた. 過酸化脂質, 肺組織内ラジカルは, 再灌流後次第に増加したが, OP投与により低値にとどまった(p<0.01). 心筋内ラジカルは, 心筋ATP量とよく相関した. 再灌流により血管内皮細胞や好中球からO2-が産生され, 直ちに・OHとなって膜に障害を与える. この・OHが低く抑えられることにより心肺機能が良好に保たれ, 再灌流障害におけるフリーラジカルとくに・OHの関与が示唆された. また, OPによる血小板凝集抑制が, 微小血栓の生成を抑制し, 呼吸器, 心機能を維持し, 更には心筋内の円滑なエネルギー代謝に寄与することが示唆された. |