アブストラクト(40巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 三尖弁弁輪径及び弁輪短縮率からみた機能的三尖弁閉鎖不全症の評価ならびに手術適応に関する研究
Subtitle :
Authors : 渡辺真一郎, 松田暉
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 3
Page : 359-367
Year/Month : 1992 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 超音波パルスドプラーエコー法による三尖弁閉鎖不全症診断法を用い, 三尖弁弁輪径及びその弁輪短縮率から術後早期における三尖弁閉鎖不全症の評価を行い, 本症に対する三尖弁弁輪形成術の手術適応を明確にすることを目的とした. 対象は昭和59年5月から昭和62年2月までの僧帽弁手術症例の中で, 術前中等度以上の三尖弁閉鎖不全症(TR)症例に対し, Kay法による三尖弁弁輪形成術(TAP)を施行した23例をTAP群, 及び軽度のTRを認めたがこれを放置した38例をTR放置群とし, 計61例を検討した. 年齢は27~69歳(平均年齢:49.5±9.7歳)で性別は男23例,女38例であった.弁病変は僧帽弁狭窄症(MS)20例, 僧帽弁閉鎖不全症(MR)10例, 僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSR)31例であった. これらに対し人工弁置換術(MVR)を42例, 直視下交連切開術(OMC)を15例, 弁輪形成術(MAP)を4例に施行した. 術後早期にドプラー法を用いてTRの検査を行い, TRの残存の有無及びこれに関与する因子, 特に三尖弁弁輪径(TVD)及び弁輪短縮率(STA)において検討し以下の結果を得た. 1) TVDと右室容積及び血行動態諸量との関係について拡張末期容積係数(EDVI), 三尖弁の逆流率(RF), 収縮末期容積係数(ESVI), 肺血管抵抗(PVR), 平均肺動脈圧(PAm), 平均右房圧(RAm)及び右室拡張末期圧(RVEDP)との間にはそれぞれ有意の正の相関を認めた(p<0.01). STAとEDVI, RF, ESVI, RAm, RVEDPとの間には有意の負の相関を認めた(p<0.05). 2) TR放置群において術前三尖弁弁輪径は術後TR残存例(平均32.5±3.9mm/m2)ではTR消失例(平均25.7±3.8mm/m2)に比し有意に大であった(p<0.01). 3) TAP群においては術後TR残存例とTR消失例との間に三尖弁弁輪径には有意な差を認めなかったが, 術前の三尖弁弁輪短縮率はTR残存例(平均3.4±3.3%)においてTR消失例(平均8.8±5.0%)に比し有意に低値であった(p<0.05). 以上より, TRが術前軽度と判断されても術前に三尖弁弁輪径の拡大を認める症例に対してはTAPの手術適応があると考えられた. 術前三尖弁弁輪短縮率の低下を認める症例では, TAPの術後早期においてTRが残存することが明らかになった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖不全症, 三尖弁弁輪径, 三尖弁弁輪短縮率, 三尖弁弁輪形成術, 超音波パルスドプラー法
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