Authors : |
林純一, 山本和男, 菅原正明, 藤田康雄, 中沢聡, 小熊文昭, 土田昌一, 宮村治男, 江口昭治 |
Abstract : |
1980年から1991年8月までに教室で手術を施行した僧帽弁閉鎖不全症99例を対象として術式選択と遠隔成績を検討した. 病因・弁病変別に弁形成率を調べ, 弁形成群と弁置換群とで, 生存率, 合併症回避率, 遠隔期左室機能を比較した. 主な弁形成術式は, 腱索断裂により逸脱した弁尖の切除・縫合, 腱索延長に対する短縮術, 弁尖穿孔部のパッチ閉鎖, Kay法による弁輪縫縮であり, 広範な弁尖・腱索病変や感染肉芽を有する例では弁置換を行った. 弁形成術成功例は, 変性による後尖腱索病変10/16(62.5%), 狭窄病変のないリウマチ性病変3/7(42.9%), 感染性心内膜炎2/9(22.2%), 病因不明2/2で, 狭窄を合併したリウマチ性病変39例では弁形成の成功例はなかった. 全体として28例で弁形成を試み, 19例で成功し, 80例が弁置換となった. 手術死・病院死を含めた実測生存率は術後10年で, 弁置換群92.9±3.1%, 弁形成群83.6±10.8%, 合併症回避率は術後10年で, 弁置換群84.0±4.9%, 弁形成群72.9±12.0%で, いずれも両群に有意差を認めなかった. 更に術後遠隔期の左室容積, 左室収縮性は弁置換群, 弁形成群とも, 術前と比べ有意の改善を認めた. 以上のごとく, 狭窄病変を伴わない非虚血性僧帽弁閉鎖不全症は, 適切な弁形成術式の選択により形成可能な例が多く, また弁置換術に匹敵する遠隔成績と左室機能を認めた. |